Webサイトにおける効果的なカラースキーム

西城孝利

アートディレクター
西城 孝利

その他

私たちは日常的に視覚からの情報に強く影響を受けています。特にWebサイトにおいて色は単なる装飾以上の重要な役割を果たしており、それはユーザーが感じる印象、情報の伝達、さらにはブランドの精神を反映する手段として機能しています。色の選択は、単に個人的な好みや流行を反映するだけではなく、ユーザーに与える感覚的な影響や期待される反応を考慮して行わなければいけません。

この記事では、Webデザインにおける色の重要性、心理的効果やブランドアイデンティティとの関係性、Webサイトから伝えたいメッセージや感情を最適な配色によって効果的に表現する方法等を解説していきます。

色彩の心理学

色彩心理学は、色が個人の感情や振る舞いにどのように影響を及ぼすかを探究する学問領域です。さまざまな色が異なる感情的反応を生じさせることが広く認識されています。たとえば、赤色は情熱や緊迫感を示唆し、青色は信頼や冷静さを表現するとされています。しかしこれらの色が人に与える印象は個々によって変わり、赤の情熱が肯定的な効果をもたらす一方で、同じ色が危機感などの否定的な感情を引き起こすこともあります。

色と感情の関係

赤色 エネルギー、緊急性、情熱。販売促進や注意喚起に効果的
青色 信頼性、安心感、専門性。企業サイトや医療関連サイトに適しています
緑色 健康、安らぎ、自然。エコ関連のウェブサイトや健康産業に好まれます
黄色 楽観、活気、創造性。若者向けのウェブサイトやクリエイティブなコンテンツに使われることが多い

単一色だけでは人の感情をコントロールすることは難しく、そこで重要となってくるのは配色です。Webサイトの配色は、ユーザーの感情や行動に大きな影響を及ぼします。単一色ではなく、複数の色を組み合わせることで、より豊かな感情的な体験を作り出すことができます。

配色で変わる色のイメージ

Webサイトの配色はとても重要です。色の組み合わせによってユーザーの感情や行動に大きな影響を与え、一色だけではなく複数の色を使うことで、狙った雰囲気のWebサイトに近づけることができます。単一色では伝えきれない内容も、色を組み合わせることで、より鮮明にユーザーの記憶に残すことができ、赤一色で表現すると様々な意味が想起されますが、複数の色を使うことで狙った印象を与えることが可能です。色の選び方には、色が注目を引く力や前に出る色、温かい色や冷たい色などの特性を考慮し、ターゲットや目的に合わせて慎重に行う必要があります。これらの特性を理解し適切に使うことで、効果的なWebサイトを作り上げることができます。

Webサイトの配色

Webサイトの配色において「ベースカラー(70%)、メインカラー(25%)、アクセントカラー(5%)」という配色が最適と言われています。

ベースカラーはWebサイトの背景やレイアウトの大部分を占める色で、サイト全体の基調となる色で、基本的には落ち着いた色調が選ばれコンテンツを目立たせるための色となります。メインカラーはサイトの主要な要素、例えばヘッダー、フッター、見出しなどに使用される事が多くこの色はブランドアイデンティティを反映し、ユーザーの注意を引くために使用されます。ベースカラーとは対照的でありながら、全体のデザインと調和する色が適しています。最後にアクセントカラーは重要なアクションボタンやリンク、ハイライトなどに使われる色です。目を引く明るい色や、強いコントラストを生む色やメインカラーの補色などが多く使用されています。

主色と補色のバランス

主色 Webサイトの基調となる色です。ブランドアイデンティティやコンセプトを反映させる色を選びます
補色 主色を補完し、バランスを取る色です。補色は主色と対照的であることが多く、デザインに深みを与えたり、特定の要素を強調したりします

色の組み合わせの原則

コントラスト 色のコントラストを利用して、読みやすさを保ち、ユーザーの目をナビゲートします
調和 色の調和はWebサイトの一体感を作り出します。似た色合いや相補色を選ぶことで、一貫性のあるデザインを実現できます
色相環 色相環を参考にして、色の組み合わせを選ぶと効果的です。例えば、隣接する色(類似色)や正反対に位置する色(相補色)を選ぶと、自然でバランスの取れた配色になります

Webサイトの配色は、ただ色を選ぶだけでなく、それらがどのように組み合わさるかを考慮する必要があります。2色目以降のカラー選択は、Webサイトの視覚的な印象を決定づけ、ユーザーの体験に大きな影響を与えます。効果的な配色は、Webサイトの目的やメッセージを強化し、魅力的なユーザー体験を提供することができます。

ブランドアイデンティティとカラー

ブランドアイデンティティとは

ブランドアイデンティティは、ブランドが持つ独自の特徴や価値観を象徴し、消費者に対してそのブランドをどのように認識させたいかを表すものです。これにはロゴ、タイポグラフィ、スローガン、そして色彩が含まれます。

カラーの役割

感情 色は特定の感情や感覚を喚起することができます。例えば、赤は情熱やエネルギーを、青は信頼性や安心を象徴します
記憶 人は色を容易に覚え、関連付けることができます。一貫したカラースキームは、ブランドの認知度を高め、消費者の記憶に残りやすくなります
差別化 カラーを使って競合他社との差別化を図ることができます。独自のカラースキームを使用することによりブランドを印象的なものにします
文化的要素 色の意味は文化によって異なるため、ターゲット市場の文化的背景に合わせた色の選択が求められます

ブランドアイデンティティにおいてカラーは、感情的な共感を促し、ブランドを際立たせる強力なツールです。ブランドの個性を正確に表現し、消費者に記憶されるように効果的に色を選び、使用することができれば自社が伝えたいイメージをそのまま伝える事ができるでしょう。

またブランドアイデンティティを表現する上でコーポレートカラーはそのアイデンティティを視覚的に表現し、消費者に伝える役割を担っていると言えるでしょう。色選びはブランドの個性を反映し、消費者との感情的な結びつきを築くための鍵となります。適切に選ばれ、一貫して使用されるコーポレートカラーは、競合他社との差別化するうえで重要な要素となります。

アクセシビリティとカラーコントラスト

アクセシビリティとは

アクセシビリティは、障害を持つ人々を含む全てのユーザーがWebサイトやモバイルアプリを利用できるようにすることを指します。これには視覚障害、聴覚障害、運動障害、学習障害など、様々な障害を持つユーザーのニーズを考慮することが含まれます。

カラーコントラストの重要性

  • 可読性の向上
    高いカラーコントラストはテキストの可読性を向上させます。特に視覚障害のあるユーザーや高齢者にとって、テキストと背景との明確なコントラストは非常に重要です。
  • 色覚異常への対応
    色覚異常(色盲)のユーザーは特定の色を識別するのが困難です。カラーコントラストの最適化は、これらのユーザーが情報を理解するのを助けます。
  • 全体的なユーザー体験の向上
    高いコントラストは、全体的なユーザー体験を向上させ、Webサイトの利用をより快適にします。

カラーコントラストのガイドライン

WCAG 2.1では、テキストと背景間の最小コントラスト比率を規定しています。通常のテキストは少なくとも4.5:1、大きなテキストは3:1の比率が推奨されます。

またカラーコントラストを評価するためには、個人の感覚だけではなく適切なツールの活用が必要です。多くのオンラインツールやソフトウェアがあり、これらを使用して、デザインがアクセシビリティ基準を満たしていることを確認することができます。

トレンドカラーの特性

トレンドカラーは、時代のムードや流行を反映した色で、ファッション、インテリアデザイン、アートなど多くの分野においてその時々のトレンドを表現します。Webデザインにおいても、トレンドカラーはユーザーに新鮮で現代的な印象を与えることができますが使用の際には注意も必要です。

トレンドカラーの利用は限定的なキャンペーンやイベントなど短期的な使用を前提として活用方法をおすすめします。トレンドカラーはWebデザインに新鮮さをもたらす要素ですが、コーポレートサイトなど長期的な視点を持つ場合には、ブランドアイデンティティを損なわないよう慎重にならなければなりません。トレンドに流されることなく、時代を超えたデザイン要素とバランス良く組み合わせることで、魅力的で持続可能なWebデザインを実現することができます。

まとめ

Webサイトにおいて色は単なる装飾ではなく、ユーザーの感情や行動に大きな影響を与えます。特に、ベースカラー、メインカラー、アクセントカラーの効果的な組み合わせは、ウェブサイトのユーザーエクスペリエンスを向上させる重要な要素です。

効果的なWebサイトデザインとブランドアイデンティティの構築は、色の選択が重要な要素となります。適切に選ばれたカラースキームは、ユーザーに強い印象を残し、ブランドの独自性と認知度を高めるために不可欠な要素です。これらの知見を活用して、より魅力的で効果的なWebデザインとブランド戦略を展開することができます。

この記事を書いた人

西城孝利

アートディレクター

西城 孝利

大規模から小規模まで様々な業種のUI/UXデザインを担当。
長期運用を想定したデザインコンセプトの策定や、トレンドやUXを意識したWebサイト全体の品質管理を行う。

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