『就職白書2025』等に見る、求職者のリアルな動向

伊藤彩乃

アカウントマネージャー
伊藤 彩乃

ビジネスヒント

こんにちは、営業担当の伊藤です。

今回は、『就職白書2025』(リクルート 就職みらい研究所)及び『「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」第一弾』(リクルート)の内容から、企業の採用担当者様が知っておくべき求職者のリアルな動向をピックアップしお伝えします。

初めに結論だけ述べると、求職者向けの情報発信が待ったなしの状況です。以下、なぜそうなのか(Why)、どこが主戦場か(Where)、何の情報が重要か(What)、どうしたら伝わるか(How)に分けてまとめました。

はじめに:そもそも論(Why)

まず注目したいのは、『就職白書2025』のPart1「労働供給制約社会という重要課題」のまとめ部分から以下の記述です。(「労働供給制約社会」とは、言い得て妙でもあり、恐ろしくもありますね…)

昨今の若者は、SNSや、クチコミサイトなどを活用して多角的に企業情報を収集し、気になる点があれば応募を躊躇する傾向がある。その意識は、入社後まで維持され、ひとたび違和感を覚えれば選考・内定辞退や早期退職も辞さない。(中略)図①に「職場の魅力」が外部人材と内部人材に求心力を発揮する枠組みを示した。外部人材に対する求心力は、情報が開示され魅力を感じてもらえる環境であること。内部人材に対しては、キャリア開発支援やウェルビーイングへの配慮が彼らの活躍を促し、職場に居ることをより魅力的なものにすること。その結果、ワークエンゲージメントや定着率向上にも寄与するだろう。

出典:リクルート 就職みらい研究所『就職白書2025』p10


嚙み砕くと、「若者はいろんなところから情報をかき集めるし、思っていたのと実際が違っていたら辞めちゃうから、ちゃんと職場環境を整えて、リアルな情報をバンバン出していきましょう」ということ。「魅力的な職場づくり」と「リアルな情報発信」、どちらも怠ってはならず両輪を回していく必要があるのです。
そもそも論ですが、採用担当者自身が魅力を感じられない職場では、発信する内容も薄っぺらになってしまいます。どんなに採用サイトをきれいにかっこ良くしても、「魅力的な職場づくり」を怠る企業は選ばれなくなっていくでしょう。
同様に、せっかく働きやすい環境や魅力ある職場づくりを実現しても、それを分かりやすく発信しなければ選んでもらえない、ということです。
例えば、福利厚生の紹介にしても、各種手当や制度の名前だけを羅列している企業より、実際にそれを利用した社員の感想や利用の背景・流れなどを載せている企業のほうが、説得力や魅力を感じますし、ついでに企業の姿勢や社風なども感じられて、明らかに記憶に残りやすいですよね。
よりリアルな情報(個別具体的な情報)をたくさん発信しているほうが、学生にもイメージしやすく伝わりやすいのです。

この労力を惜しんでいては、「労働供給制約社会」を生き残るのは厳しくなっていきます。

学生の採用情報の収集手段トップ15(Where)

ところで、学生側はそうした企業の情報をどこで入手しているのでしょうか?

『就職白書2025』データ集によれば、2025年卒大学生・大学院生の採用情報収集手段は次のとおりでした。(元のデータからトップ15を抽出してリスト化しています。)

企業・各種団体等の採用情報に関する情報収集の手段(学生全体/複数回答)

1位 個別の企業・各種団体等のホームページ:75.4%
2位 就職情報サイト、就職情報アプリ:47.5%
3位 個別の企業・各種団体等の説明会・セミナー:37.0%
4位 社員による評価サイト:36.3%
5位 就職情報企業が主催する合同企業説明会・セミナー:32.2%
6位 大学が主催する合同企業説明会・セミナー:22.9%
7位 SNS:21.7%
8位 IR情報・経営情報(有価証券報告書等):20.6%
9位 個別の企業・各種団体等から送られるメール:18.4%
10位 個別の企業・各種団体等について紹介する、パンフレットや映像メディア:15.3%
11位 就職情報誌:14.0%
12位 動画配信サービス(YouTube等):13.3%
13位 大学にある求人票:12.9%
14位 OB・OGなど社会人の先輩から得られる情報:12.6%
15位 逆求人やスカウトなど、ダイレクトリクルーティングサービス:12.3%

以下略
(出典:リクルート 就職みらい研究所『就職白書2025』データ集p39)

1位の個別ホームページが、2位の就職情報サイト・アプリに大差を付けています。企業認知のきっかけが何であれ、選考がどの段階であれ、個別ホームページは必ずチェックされるので、当然といえば当然でしょう。

「4位 社員による評価サイト:36.3%」はいわゆるクチコミサイトのことですね。自社についてネガティブな投稿があると気になってしまいますが、このランキングから、ちゃんと学生が企業自身の発信する情報を広く見て判断しようとしていることが分かります。クチコミサイトの他に、企業情報の入手手段はこんなにたくさんあるのです。もちろん改善できるところは改善しつつ、最新の状況を具体的に分かりやすく発信していきましょう。

「7位 SNS:21.7%」については、実は企業側で採用情報の提供に利用しているのは、26.7%しかいません。(出典:リクルート 就職みらい研究所『就職白書2025』データ集p128)
公式情報のないSNS上で学生が目にするのは、第三者が発信している情報か、情報がない状態。ぜひSNS上にも公式情報を流通させたいところです。
ちなみに、同データ集にある「卒業後の進路を考える上で影響を受けたもの」という調査では、「ソーシャルメディアで発信している個人の情報、書き込みサイト等」は10.7%でした。これは、「マスメディア(新聞・テレビ・雑誌・書籍等)」の8.0%を上回る数字です。
マスメディア<SNS”という現実——。学生に働きかけるためには、マスメディアに多額の広告費をかけて終わりではなく、自社媒体やSNSによる具体的な情報発信にこそ注力する必要があるのです。

求められる「人的資本の情報開示」とは(What)

では、求職者に知ってもらい選んでもらうためには、具体的に何を発信すればよいのでしょうか?

「人的資本の情報」を開示することで選考参加意欲が上がる

リクルートが発表した『「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」第一弾』では「求職者の44.5%が人的資本の情報開示により選考参加優先度が向上する」と回答したことが示されています。「人的資本の情報開示」については以下のとおり。

人的資本の情報開示…企業が従業員(「人的資本」)の在り方(給与、働く環境、多様性、スキル、経験、育成、ハラスメントなど)をどのように捉え、「人的資本」の実態やそれがビジネスにどのように影響を与えているかを公開すること
※出典:リクルート「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」第一弾

■就職活動・転職活動の際に、企業の人的資本の情報開示が充実している場合、その企業の選考を受ける優先度について

 

一方で、この「人的資本の情報」を把握していた求職者は約2~3割、企業側の求職者への開示状況も約3割前後とのこと。情報開示がまだ足りていないことが指摘されています。

特に「エンゲージメント」「育成方針」の情報提供企業は採用成果も高い

さらに、従業員のエンゲージメント・モチベーションに関する情報や育成方針を具体的に開示している企業は、新卒・中途ともに採用充足率が高いという結果も。

■求職者への情報提供状況と採用人数確保の関係

※グラフの数値は、「十分に人数を確保できているか」の設問で「あてはまる」「ややあてはまる」の計(全体/単一回答)(%)

【新卒採用】

 


【中途採用】

 

このデータから、「エンゲージメント・モチベーション」「育成方針」に関する具体情報をサイト等に掲載していない企業は、対策の優先順位がかなり高いと言えます。

情報が曖昧なことで選考辞退される企業も

加えて、求職者の約3~4割が、給与・キャリアパス・スキル要件などの“情報の曖昧さ”が選考辞退の理由になったと回答しました。

■直近の就職活動・転職活動の際に、選考が進んでいた企業の選考を辞退した理由について

(選考辞退経験者/各単一回答 n=417)(%)

※出典元のグラフから上位6位を抽出

 

情報が不足していると、せっかく選考が進んでいても途中で辞退されるという深刻なリスクがあるのです。

どうやったら伝わるの?特にBtoB企業!(How)

「人的資本の情報」「エンゲージメント・モチベーション」「育成方針」を伝えろって言われても、どうしたらいいの?と頭を抱える方もいるかもしれません。なるべく簡単に済ませたくなってしまうと思いますが、特に学生は、数値データや制度名だけを並べられてもピンと来ません。
そこで威力を発揮するのが、様々な読み物コンテンツです。具体的なエピソード、個別のプロジェクト事例、先輩の生の声、社員アンケートなど。多角的に情報提供することで、社会人経験のない学生にも理解しやすくなり、腹落ちしてもらえるのです。

これらのコンテンツを作り、発信する努力をしなければ、採用市場で埋もれてしまいます。
努力と言っても、内部で悩んで時間を浪費するのでなく、ぜひ早めに外部の力・プロの力に頼ってください。自社の魅力は、外の目を通したほうが見つけやすく、外の目を通してまとめてもらったほうが分かりやすくなります。

特にBtoB企業の場合、普段は取引先向け・法人向けの情報発信が大半です。そんな中、人材採用だけは「素人」向け。そのため、こうした情報発信に慣れていないのがウィークポイントとなります。加えて、事業内容や保有技術・製品が専門的で伝わりづらい…という、まさにダブルパンチ。
BtoB企業ほど、“知ってもらう努力・伝える努力”=採用広報の強化が必要なのです。

おわりに:まずは“伝えること”から採用活動が始まる

採用に関する様々な調査は、「発信しない企業は、選ばれない」ことを示しています。

「人が採れない」「定着しない」――その原因は、情報発信の不足かもしれません。

シアンスは、新潟県内のBtoB企業様に特化し、企業の魅力を“正しく、魅力的に”伝えるためのサポートをしています。
「何から始めていいか分からない」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。

本記事の出典

  1. リクルート 就職みらい研究所『就職白書2025』冊子版PDF(5MB)
  2. リクルート 就職みらい研究所『就職白書2025』データ集(7MB)
  3. リクルート『「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」第一弾 就職・転職活動の際、企業側の充実した人的資本の情報開示により、選考参加優先度が向上すると回答した求職者は44.5%。「向上しない」は18.9%』(2MB)

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